SKK | 三條金属株式会社

HEAT TREATMENT熱処理

三條金属はFCADに特化した一貫生産工場です。

ダクタイル鋳鉄の素材をオーステンパー処理して得られるFCAD(ADI〈Austempard Ductile Iron〉)は、鋼に近い機械的性質が得られることに加え、熱処理が比較的容易なことから、建設機械部品、建設部品を中心に応用が進んでいます。FCAD の特性は高引張強度と高靭性です。FCAD を適用することにより、必要断面積を縮小し、肉薄化、軽量化が図れます。FCAD の高硬度部分が圧倒的に深く、耐摩耗にすぐれ、部品の長寿命化を生み出します。同時に、機械加工性に難がありますが、自社にて機械加工できる条件を構築しております。
三條金属では平成3年に導入してからこの技術・生産体制・品質に国内トップメーカーからも評価を頂き、長年に渡る取引を頂いております。

オーステンパー球状黒鉛鋳鉄(ADI)ができるまで

鋼はオーステナイト化した後に恒温変態(ベイナイト化)させると、未変態オーステナイト→ベイナイト(フェライト+セメンタイト)のごとくベイナイト変態が生じます。一方、ダクタイル鋳鉄の場合は、鋼の場合とは異なり下記のように二段階で変態が進行することになります。

第一段階反応
未変態オーステナイト ベイニティックフェライト+炭素富化安定オーステナイト
第二段階反応
炭素富化安定オーステナイト ベイニティックフェライト+セメンタイト(ベイナイト)

第一段階反応は、まず黒鉛の周りから始まり、未変態オーステナイトから炭素溶解度が低いベイニティックフェライトが析出する。
このためにベイニティックフェライトの周りのオーステナイトは炭素が濃化されて、炭素富化安定オーステナイトとなる。

鋼の場合には、この段階で炭化物(セメンタイト)が析出してベーナイト組織が得られることになる。
更に恒温保持を続けると二段階反応が始まり、セメンタイトの析出により、脆化が急激に進む。

ADIの高強度・高靱性の性質は、第一段階反応の結果として得られるベイニティックフェライト+炭素富化安定オーステナイトの二層混合の組織によるものです。

また、ADIの組織にオーステナイトが混合することが、耐摩耗性には有利に働く一方、
オーステナイトが加工誘起マルテンサイトに変態するために、機械加工性を害することとなっています。

当社のADIヒートサイクル(標準)

このヒートサイクルを有効にするためには、鋳物素材の充分な成分管理が必要です。

機械的性質

記号 引張強さ(N/mm²) 耐力(N/mm²) 伸び(%) 硬さ(HB)
FC150 147以上 212以下
FC200 196以上 223以下
FC250 245以上 241以下
FC300 294以上 262以下
FC350 343以上 277以下
FCD350-22 350以上 220以上 220以上 150以下
FCD400-15 400以上 250以上 15以上 130~180
FCD400-18 400以上 250以上 18以上 130~180
FCD450-10 450以上 280以上 10以上 140~210
FCD500-7 500以上 320以上 7以上 150~230
FCD600-3 600以上 370以上 3以上 170~270
FCD700-2 700以上 420以上 2以上 180~300
FCD800-2 800以上 480以上 2以上 200~330
FCDA900-4 900以上 600以上 4以上
FCAD900-8 900以上 600以上 8以上
FCAD1000-5 1000以上 700以上 5以上
FCAD1200-2 1200以上 900以上 2以上 341以上
FCAD1400-1 1400以上 1100以上 1以上 401以上